カリフォルニアの赤ワインようのブドウの中で最も栽培面積の多い人気品種であるカベルネ・ソーヴィニョン。ほぼ全域で栽培されており、ワイナリー、品種ともに非常に豊富。
1本千ドル以上のカルトワインから、リーズナブルなものまで価格帯やレベルも様々。どの銘柄を選んだら良いのか難しいですよね。
この記事では、たくさんあるカリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨンの中でも、実力、人気ともに非常に高い極上のものを厳選。5つのワイナリーとそのシグネチャーとなる銘柄を紹介します。
プロのレイティング、消費者の評価、入手性などをベースに独自に選定してみました。入手困難で数百ドル以上するようなカルトワインは除外しています。
リッジ・ヴィンヤーズ(Ridge Vineyards)
歴史
1885年にモンテベロ・リッジ(尾根)に180エーカーの土地を購入しブドウを植えたのが歴史の始まり。その後、フィロキセラと禁酒法の影響に苦しめられたが、1959年にスタンフォード大学の数人の研究者が土地を購入、ワイン造りが本格的に再開。1962年がモンテベロの最初のヴィンテージ。1969年には伝説の醸造家であるポール・トレイパー氏が加入し劇的に進化させてきた。
1976年「パリスの審判」で当時は5位、30年後の2006年には2位に18ポイント差と大きく引き離し1位を獲得したことで注目を集める。数々の賞を受賞してきたポール・トレイパー氏は2016年に80歳で現役を引退したが引き続き会長として留まり、20年以上彼のもとで学んだ醸造チームがワイン造りの哲学を踏襲。
気候・土壌
サンフランシスコの南、太平洋から25キロ、カリフォルニアでも最も冷涼な産地であるサンタクルズ・マウンテンズの標高400~800メートルに位置する。海からの距離と高い標高による冷涼な気候。
土壌はカリフォルニアには珍しく石灰質と粘土層の組み合わせ。この気候と土壌の組み合わせがブドウの成熟を遅らせ糖分の蓄積が比較的少なくアルコール度数が抑えられる。酸味とタンニンは高くなる傾向にあり、またミネラル感もあり長期熟成に耐えるワインを生み出す。
ワインづくり
「プレ・インダストリアル」と言われる自然でローテクな手作業によるワイン造りにこだわる。サンタクルズ・マウンテンズの中でも最大の有機栽培のワイン畑、土着の天然酵母を使用して小さな発酵槽で発酵。
過抽出にならないように、自然のタンニンの強さとのバランスをとるため細心の注意が払われる。最もフランス的と言われるリッジのボルドースタイルだが。「つくりたいのはアメリカのワインでありボルドーの複製ではない」という信念のもと、樽はアメリカンオークにこだわる。ヴィンテージごとに醸造法、ブレンドの比率、などをブライドテイスティングによって決定する。
ワイン名 | モンテ・ベロ(Monte Bello) |
ブドウ品種 | カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、プティ・ヴェルド、カベルネ・フラン |
生産地 | サンタクルズ・マウンテンズ/モンテベロ |
ワインメーカー・ノート (2018ヴィンテージ) | 全体感:滑らかなフルボディ、長い余韻、石灰岩のミネラルと林床 香り(アロマ):カシス、フェンネル(甘みのあるハーブの香り)、コーラ、ナツメグ、焦がしたオーク、濡れた石、紅茶、甘いドライ・チャパラル(カリフォルニアの低木) 味わい:熟したカシス、ブラックベリー、マウンテン・ブランブル ABV13.7%、新樽100%(アメリカンオーク93%、フレンチオーク7%)17カ月熟成 |
ワイナリー価格/実勢価格* | $235 |
評価(Vivino/専門誌)* | 4.50/96.3(過去4ヴィンテージ平均) |
スタッグスリープ・ワインセラーズ(Stag’s Leap Wine Cellars)
歴史
1970年に創設者のウォーレン・ウィアスキーがスタッグス・リープ・ディスクリクトに44エーカーの土地を購入。スタッグス・リープ・ヴィンヤーズ(SLV)と名付けカベルネソーヴィニヨンと少しのメルローを植えたのが歴史の始まり。1972年に最初のSLVヴィンテージを生産。1974年にSLVと隣接するフェイの二つの畑のブレンドでフラッグシップとなるCASK23の初ヴィンテージ。
1976年「パリスの審判」で1位を獲得し世界中を驚かせた。 1986年にはフェイの畑を購入し1990初ヴィンテージ。それぞれの単一畑であるSLVとフェイ、最上級のブレンドであるCASK23はそれぞれの個性が見事に調和。2007年、ウィニアスキー氏は会社をアメリカ・イタリアの合弁会社に売却。売却後もワイナリーの一貫性が保たれている。
気候・土壌
ナパバレーの北東に位置する1989年にAVAとして認定された谷間に位置する小さなディスクリクトにある「谷(バレー)の中の谷(バレー)」。むき出しの岩が太陽の光を反射し日中の気温を上げ、サンパブロ湾からの冷涼な空気が夜の温度を下げるため、昼夜の温度差が大きいのが気候の特徴。
土壌は数百年前に起こった火山の影響で主に火山性で小石の混ざった水はけの良いやせたローム土となっている。これらの環境から、酸と糖分の優れたバランスを実現した土壌の滋味を蓄えた複雑なワインとなる。
隣合うSLV、フェイの畑では土壌が若干異なる。SLVの方が火山性が強い影響で、多層構造、濃度、スパイス、のニュアンスが強く「fire-like:火のような」要素と表現され、フェイは柔らかさ、豊潤なベリーのニュアンスが強く「water-like:水のような」要素と表現されることが多い。
ワインづくり
スタッグス・ワインセラーズのワイン造りの哲学はバランス、複雑性、調和のとれたクラッシックな美しいスタイルを造ること。「ベルベットグローブのに包まれた鉄の拳(An iron fist in a velvet glove)」と表現されるシグネージャースタイルは、熟度と抑制、柔らかさとストラクチャーの巧妙なバランスを表現しており長寿命なワインを生みだす。
2013年より指揮をとるワインメーカーのマーカス・ノタロ氏率いる優秀なチームによる丁寧なワイン造りが実施されている。
ワイン名 | カスク23(CASK 23 Cabernet Sauvignon) |
ブドウ品種 | カベルネ・ソーヴィニョン |
生産地 | ナパバレー/スタッグスリープ/SLV・フェイ |
ワインメーカー・ノート (2018ヴィンテージ) | 全体感:フェイの豊潤な香り、SLVのダークフルーツという2つのエステートのそれぞれの特徴を組み合わせたもの。 香り(アロマ):フローラルスパイス、サンダルウッド(ビャクダン)、濡れた石のヒントとともにダークフルーツ、スグリ、イチジクの複雑で豊かなアロマ。 味わい:クラッシックな「ピーコックテール」が口の中で広がり、後味とフィニッシュが長引く、活気に満ちた味わいと食感が特徴。 ABV14.5% |
ワイナリー価格/実勢価格* | $305 |
評価(Vivino/専門誌)* | 4.63/95.0(過去4ヴィンテージ平均) |
2017ヴィンテージ
シェーファー・ヴィンヤーズ(Shafer Vineyards)
歴史
シカゴ郊外出身の実業家で創設者のジョン・シェーファーと妻のベットが1972年に209エーカーの土地を購入。スタッグスリープの丘の中腹(ヒルサイド)にカベルネソーヴィニヨンを植える。1978年にヒルサイドセレクトの前身となる最初のカベルネソーヴィニヨンをつくる。1983年に息子のダグがUCデーヴィスで醸造、ブドウ栽培学び他のワイナリーでの経験を積んだ後ににワインメーカーとして参加し同年に最初ヒルサイドのヴィンテージを生産。翌年にイライアス(エリアス)・フェルナンデスをワインメーカーとして迎える。現在も社長のダグ、ワインメーカーのフェルナンデスでワイナリーの指揮をとっている。専門誌や評論家からの評価も非常に高く、特に2000年代以降は数多くの受賞をしている。現在は、シグネチャーのヒルサイドに代表されるカベルネソーヴィニヨン以外にもシラーやシャルドネなども生産。
気候・土壌
ワイナリーを取り囲むような14ブロックのブドウ畑。ブロックごとに日当たりや岩の露出ぐあいが異なる。日中はブドウ園の東側にある薄い岩壁が太陽の光を反射して気温を上げ、夜は湾からのそよ風で涼しく昼夜の気温差が大きい。土壌は火山性で、この気候と土壌の組み合わせにより低収量で、顆粒は小さく、濃い色と強烈でクラッシックな味わいの豊なカベルネソーヴィニヨンとなる。
ワインづくり
カベルネソーヴィニヨン100%のヒルサイドセレクトは、畑のブロックごとの気候や土壌の小さな違い、クローンや台木の組み合わせによって複雑を持たせるように工夫されている。熟成期間もブロックによって異なるため収穫時期を調整している。1980年代から持続可能な栽培(Sustainable Agriculture)にこだわりタカやフクロウなどの猛禽類による外敵の駆除など工夫し農薬や化学肥料を使わない。フランス製オークの新樽で32カ月熟成させるというカリフォルニアでも特に長い熟成期間。
ワイン名 | ヒルサイドセレクト(Hillside Select) |
ブドウ品種 | カベルネ・ソーヴィニョン |
生産地 | ナパバレー/スタッグスリープ/ヒルサイド |
ワインメーカー・ノート (2016ヴィンテージ) | 全体感:バランスの取れたパワフルなフレッシュで活気に満ちたワイン。タンニンは熟していてシルクー、今すぐ飲めるがセラーによる熟成によりさらに美しく進化、長いフィニッシュ。 香り:ブラックベリー、カシス、スグリ、濡れた石、チョコレート、ブライヤー(ローズヒップ)、オールスパイス 味わい:青々とした濃い果実の土台から、ジューシーな赤いプラム、ラズベリー、黒胡椒、ラベンダーとアニスのタッチ ABV15.5%、100%フレンチオーク32カ月 |
ワイナリー価格/実勢価格* | $300 |
評価(Vivino/専門誌)* | 4.68/97.2(過去4ヴィンテージ平均) |
2017ヴィンテージ
オーパス・ワン(Opus One)
歴史
ボルドー5大シャトーのひとつムートン・ロートシルトのバロン・フィリップ・ロートシルトとモンダヴィ・ワイナリーのロバート・モンダヴィによって1978年に設立された。1979年が初ヴィンテージで1980年ヴィンテージとともに1984年に初リリースされる。当時としては破格の50ドルという値がつけららた。(現在の値段はワイナリー価格で$365)
初期のヴィンテージではモンダヴィ所有のトカロンのブドウを使っていた。1989年にワイナリーの建設とブドウの植え替えを行い、1991年にワイナリーが完成し新しいワイナリーの初ヴィンテージとなる。リリースは1994年。現在は、オークヴィル内に4つのの自社畑を所有、うち2つはトカロン内、で残りはバレスととリヴァーという区画。
2001年にUCバークレーとボルドー大学の学位を持ち、スタッグスリープ・ワインセラーズでも経験を積んだ、マイケル・シラッチがワインメーカーに就任し今も指揮をとる。ムートン・グループからの助言も聞くが最終的な判断は彼が行うという体制。
気候と土壌
ナパバレーの中央、最も名声が高いと言われるオークヴィルの西地区に4つの自社畑を持つ。土壌は水はけの良い堆積性の砂利の沖積ロームで、夜間や早朝の霧の影響がある、酸性度を良好に保つのに役立つ。午後の日照はやや少なめ。
ワインづくり
伝統と革新の融合を基本としたワイン造り。素晴らしいワイン造りは畑に始まる。伝統的な手法を大切にしながら、革新と改良を探求し続けることで、複雑かつ繊細なワイン造りを極め続けている。栽培では手摘みをはじめとした伝統的なアプローチを維持しながら、醸造ではリサーチ、評価・判断のもと近代的な技術も取り入れている。
ワイン名 | オーパ・スワン(Opus One) |
ブドウ品種 | カベルネ・ソーヴィニョン、プティ・ヴェルド、メルロー、カベルネ・フラン、マルベック |
生産地 | ナパバレー |
ワインメーカー・ノート (2018ヴィンテージ) | ブラックベリー、カシス、ブラックチェリーの豊かな香りから、上品なスミレ、白胡椒、そしてバラの花びらへと続き、とても魅力的な芳香を放ちます。新鮮で瑞々しい黒果実の味わいがしなやかに幾層にも重なり、オレンジの皮、甘草、ダークチョコレートのニュアンスがアクセントとして感じられます。美しくバランスのとれた滑らかでやわらかなタンニンは、フレッシュな酸味と相まってソフトでクリーミーな感触をもたらし、その味わいは引き続き長い余韻となって広がります。(引用) ABV14.5%、新樽100%フレンチオーク17カ月 |
ワイナリー価格/実勢価格* | $365 |
評価(Vivino/専門誌)* | 4.70/96.3(過去4ヴィンテージ平均) |
ドミナス・エステート(Dominus Estate)
歴史
シャトー・ペトリュスをはじめとするボルドー右岸の一流シャトーの所有者兼総支配人としてで有名な、クリスチャン・ムエニック。1968年から69年にUCデーヴィスで栽培学、醸造学を学んだ際にナパバレーに魅了される。
70年代にボルドーでブドウの品質向上に従事した後、帰国から12年後の1982年にヨントビルに西地区にナパヌークという124エーカーの畑とのパートナーシップを締結しドミナスを設立。
ボルドーの技術とナパのテロワールを活かしつつボルドーの複製品を造るのではなくフランス式固定観念にとらわれないワインづくりを目指す。1983年が初ヴィンテージ。1995年にはナパヌークを自社所有とする。以降、毎年安定して高い評価のワインを造る。
気候と土壌
ナパバレーの中心ミッドバレーに位置するヨントビルはサンパブロ湾からの涼しいそよ風によって和らげられた暖かく乾燥した夏、他の地域より日中の温度が少し低い。土壌は火山性で水はけの良い粘土ローム。なだらかな斜面で地下に水脈がある。
ワインづくり
ナパヌークのテロワールの特徴を表現することをビジョンにかかげる。何世紀にもわたるブドウ栽培とワイン醸造の伝統を革新的な手法と組み合わせて、最高の品質のブドウから長期熟成のポテンシャルを持った素晴らしいワインを造り出す。
純粋さ、バランス、複雑性のあるワイン造りを目指す。手によるクラスター選別、収穫、ワイヤーによる日照量の調整などの丁寧なブドウ造りをする。一方で、ブドウの選定、発酵、熟成と全体のプロセスを通して最小限の介入と制限にとどめることによりブドウの個性を活かすワインづくりりを行っている。
ワイン名 | ドミナス(Dominus) |
ブドウ品種 | カベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン、プチ・ヴェルド |
生産地 | ナパバレー |
ワインメーカー・ノート (2018ヴィンテージ) | 完璧にバランスの取れたドミナス2018は、甘いブルーフルーツ、ジャスミン、カルダモン、プラムとキャラメルの層のアロマで味覚に焦点を合わせ続けます。非常に長いフィニッシュ。深く、複雑で、明瞭に表現されています。 ABV14.5%、新樽40% |
ワイナリー価格/実勢価格* | $300 |
評価(Vivino/専門誌)* | 4.63/97.9(過去4ヴィンテージ平均) |
まとめ
今回ご紹介した5銘柄のおすすめポイントをまとめます。
ワイナリー/銘柄 | 価格 | おすすめポイント |
リッジ/モンテベロ |
価格:$235 Vivino:4.5 プロの評価:96.3
|
エレガントなカリフォルニアのボルドースタイルのベンチマーク的存在。このクラスとしては比較的リーズナブル |
スタッグス・リープ/カスク23 |
価格:305 Vivino:4.63 プロの評価:95 |
カリフォルニアの歴史を変えた「パリスの審判」1位のワイナリーがつくるシグネーチャー |
シェーファー/ヒルサイドセレクト |
価格:325 Vivino:4.68 プロの評価:97.2 |
パワフルで豊潤なナパらしいカベルネ・ソーヴィニョン |
オーパス・ワン/オーパス・ワン |
価格:365 Vivino:4.7 プロの評価:96.3
|
人気、知名度抜群、安定感のあるナパの代表、ナパを語る上では外せない |
ドミナスエステート/ドミナス |
価格:300 Vivino:4.63 プロの評価:97.4 |
実力ナンバーワン、ボルドーとナパの融合、カルトワイン以上の実力 |
決して安いものではないですが、カリフォルニアの極上のカベルネ、ボルドースタイルとしてはいずれも実力、人気ともに高いものです。
どのワイナリーもセカンドワインもリリースしておりそれらの銘柄から自分の好みを探していくのも良いと思います。
これらの他にもジョセフ・フェルプス(Joseph Phelps)のインシグニア(Insignia)はカリフォルニアのボルドースタイルの先駆けとして有名で実力、人気ともに非常に高い(価格$265/vivino4.65/専門誌96.6)、また日本でも人気が高くわかりやすい味わいから高級カリフォルニアワインの入り口として、シルバーオーク(Silver Oak)やケイマス(Caymus)などから試してみるもの良いかもしれません。
ナパの極上のカベルネ・ソーヴィニョンは投資対象としても注目されている。(ワイン投資はこちらの記事もご参考)
高級ワインを購入する際にはヴィンテージ情報も大事だと思います。以下の記事ではナパバレーのカベルネ・ソーヴィニヨンのヴィンテージ比較をしていますのぜひ参考にしてみてください。
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