ニューワールドを代表するワインの産地であるアメリカ。そのアメリカで人気のブドウ品種とその特徴について世界の産地と比較しながらまとめました。
それぞれの品種のおすすめワインの記事へのリンクもありますので併せてご参照ください。
ブドウ品種
アメリカでは約80万エーカー(32万ヘクタール、3,200平方キロ、東京の1.5倍くらい)ほどのワイン用のブドウ栽培面積があるといわれています。
これは、イタリア、フランスについで世界で3番目に多く全体の9%程度といわれている。
そのうち上位は黒ブドウ、白ブドウそれぞれを代表する品種のカベルネ・ソーヴィニョンとシャルドネで約10万エーカー(4万ヘクタール、400平方キロ、23区の2/3くらい)とそれぞれ全体の10%強となっている。
シャルドネは引き続き高い人気を誇るが、過去10年で若干減少しているが、それでも世界的にみてもアメリカはシャルドネの主要な産地となっており、世界の約20%の栽培面積。
同じ白ブドウでもピノグリやソーヴィニョンブランがそれぞれ約2万エーカーと急激に伸びている。ソーヴィニョンブランは、ニュージーランド産などにみられるさわやかな酸味、草っぽいニュアンスのものから、カリフォルニアらいしいフルーティーなものまで近年人気が高まっている。
黒ブドウではカベルネ・ソーヴィニョンは安定して成長を続けている、一般的に栽培が難しいといわれているピノノワールは目覚ましく成長している品種で、6万エーカー弱、特にオレゴンでは全体の60%を占める2万エーカーがピノノワール。
ボルドーブレンドで使われることも多いメルローやアメリカ独自の品種であるジンファンデルも5万エーカーほどと安定している。シラーはカリフォルニアやワシントンを中心に近年成長しており、2万エーカー強となっている。
アメリカの白ブドウ上位品種
| 栽培面積(アメリカ) | 栽培面積(世界) | |
| シャルドネ | 100,000エーカー/40,000ヘクタール | 500,000エーカー/200,000ヘクタール |
| ピノグリ | 20,000エーカー/8,000ヘクタール | 40,000エーカー/16,000ヘクタール |
| ソーヴィニョンブラン | 20,000エーカー/8,000ヘクタール | 300,000エーカー/120,000ヘクタール |
アメリカの黒ブドウ上位品種
| 栽培面積(アメリカ) | 栽培面積(世界) | |
| カベルネ・ソーヴィニョン | 100,000エーカー/40,000ヘクタール | 800,000エーカー/640,000ヘクタール |
| ピノノワール | 60,000エーカー/24,000ヘクタール | 300,000エーカー/120,000ヘクタール |
| メルロー | 50,000エーカー/20,000ヘクタール | 600,000エーカー/240,000ヘクタール |
| ジンファンデル | 50,000エーカー/20,000ヘクタール | 80,000エーカー/32,000ヘクタール |
| シラー | 20,000エーカー/80,000ヘクタール | 500,000エーカー/200,000ヘクタール |
品種の特徴(白ブドウ)
シャルドネ(Chardonnay)
【主な産地】フランスのブルゴーニュが原産。世界的中で栽培されているワイン用の白ブドウで最も有名なブドウ品種。フランスはブルゴーニュのシャブリ地区やコート・ドール地区が有名、シャンパーニュではスパークリングワイン用、その他のヨーロッパ、オーストラリア、チリ、アルゼンチン、南アフリカ、と新旧世界のどこでも栽培されている。アメリカでも広く栽培されているが他の品種同様カリフォルニアが最も多くソノマやサンタバーバラは人気の生産地。
【特徴】ブドウ品種としての特徴が少ないのが特徴。そのため、気候や土壌、醸造方法や熟成方法などの影響を受けやすい品種といわれている。例えば石灰質土壌のシャブリではミネラルで酸味の強いものが、カリフォルニアで新樽比率の高いものはリッチでバターのような風味。カリフォルニアでも近年ではリッチなものからエレガントで繊細なものが好まれる傾向になってきており、ワインづくりにも影響を与えている。
カリフォルニアのシャルドネ:青リンゴ、イチジク、柑橘類、ミディアムからフルボディ、複雑なアロマ、適度な酸味、オーク熟成によってバニラやトースト
ピノグリ(Pinot Gris)
【主な産地】フランスのブルゴーニュが原産でピノノワールの突然変異でできた品種といわれている。フランスのアルザス地方、イタリア北東部のフリウリ、ドイツのバーデン地方、ニュージーランドなどが主な産地、近年世界中で栽培面積が増加している。イタリア系移民のワイナリーではピノグリージョと呼ばれることも。アメリカでも人気が高まっており、カリフォルニアだけでなく、オレゴンでも高品質なピノグリが生産されている。比較的リーズナブルワイン。
【特徴】ピンクがかった灰色(フランス語でグリ)の外観が特徴で濃いめの果皮を持つ。そのため、色合いも他の白ワインと比較すると濃くなる傾向がある。白ブドウの中では豊かな果実味とボディを持つブドウで酸味は落ち着いてやわらかい。
カリフォルニアのピノグリ:リンゴ、洋ナシ、柑橘類のフレーバーとアロマを備えた、すっきりとした飲みやすいワイン
ソーヴィニョンブラン(Sauvignon Blanc)
【主な産地】白ブドウではシャルドネに次ぐ栽培面積を誇り、フランスのボルドーやロワール地方で古くから栽培されている。ニュージーランド、オーストラリア、チリ、南アフリカ、イタリアなどでも多く栽培されている。特にニュージーランドのマールボロ地区は有名。アメリカでは他の品種同様いカリフォルニアが多く特にナパ、ソノマで品質の高いものが生産されている。フランス中央部ではブラン・フュメ、アメリカでは一部フュメ・ブラン、ドイツやオーストラリアではムスカット・シルヴァーナーと呼ばれることもある。
【特徴】フランス語で野性的(ソヴァージュ)が語源といわれる。ブドウの房と実は小さく熟すと黄金色に変化する。一般的にはフレッシュな酸味と柑橘系果実やハーブなどのさわやかな香りのあるシャープな味わいが特徴だが、地域によって異なり、冷涼な地域ではさわやかな香りや酸味、温暖な地域ではフルーティーさがより強く出る傾向にある。
カリフォルニアのソーヴィニオンブラン:ライム、グレープフルーツ、青リンゴ、イチジク、メロンのアロマとフレーバー、セミヨンとのブレンドでハニーノートを加えることも。
品種の特徴(黒ブドウ)
カベルネ・ソーヴィニョン(Cabernet Sauvignon)
【主な産地】フランスのボルドーが原産だが世界中で栽培される栽培面積の最も多い品種。ボルドーではメドックなどの左岸、イタリアのトスカーナ地方や南欧、東欧、ニューワールドでは、チリ、オーストラリア、アルゼンチン、などが世界的にも高品質なカベルネ・ソーヴィニョンを生産。アメリカではやはりカリフォルニアが多く中でもナパはボルドーと並んで世界的にも有名なワイナリーが多いソノマや近年注目のパソロブレスも。カリフォルニア以外ではワシントン州コロンビアバレーの一帯。
【特徴】DNA鑑定からカベルネ・フランとソーヴィニオンブランを両親にもつとされている。小さい果実で皮が厚い。カシスなどの凝縮した果実味、針葉樹やミントなどのフレーバーが特徴。タンニンも強いく長期熟成に向いたワインとなる。ボルドーではメルロー、カベルネ・フラン、マルベックなどとブレンドされることが多いが、アメリカやチリなどでは単一品種も多い。
カリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニョン:ベリー、スグリ、カシス、ピーマン、トースト、オークのアロマとフレーバーが一般的には含まれドライでフルーティーなワイン。リリース時にも楽しめるが10~20年の熟成の可能性もある。
ピノノワール(Pinot Noir)
【主な産地】フランスのブルゴーニュが原産の非常に古いワインで多くのブドウの祖先とされている。産地はブルゴーニュが何といっても有名で、冷涼な気候を好むため、ニューワールドの中でも冷涼な地域で栽培されることが多い、ニュージーランド、オーストラリアや南アフリカの冷涼な地域。アメリカでもやはり冷涼な地域、カリフォルニア州ではソノマやサンタバーバラ、近年ではブルゴーニュの気候に近いオレゴンも世界的に注目されており特にウィラメットバレーは有名。
【特徴】粒は中程度で皮は薄い。透明感のあるルビー色、ラズベリー、イチゴ、チェリーなど赤い果実、タンニンはそれほどなく渋みの少ない、程よい酸味の軽くエレガントな味わいが特徴のワインとなる。ブルゴーニュでは畑ごとに味わいの差がはっきりと出る繊細でエレガントなワインが多い、ニューワールドでは比較的果実味の高いワインが多くなる傾向にある。
カリフォルニアのピノノワール:ラズベリー、プラム、ローズ、スパイスの微妙なフレーバーとアロマ
オレゴンのピノノワール:カリフォルニアと比較すると酸味のある繊細でエレガントな傾向にある
メルロー(Melrot)
【主な産地】フランスのボルドーが原産でサンテミリオンやポムロールなどの右岸地区で多く栽培されている。環境適応力が高く育てやすいブドウで世界中で栽培されている。欧州産ワイン用のブドウの栽培が難しい日本でも栽培されている。アメリカではカリフォルニア、中でも内陸部のセントラルヴァレーが最も大きい栽培地域でナパ、ソノマがそれに続く。
【特徴】中程度の大きさの粒と大き目の房、ブラックチェリー、プラム、などベリー系のアロマとフレーバー、チョコレートのような甘いスパイス、低い酸とやわらかいタンニンが特徴で、まろやかでしなやかな、親しみやすいワイン。ボルドー左岸ではカベルネ・ソーヴィニョンと、右岸ではカベルネ・フランとブレンドされることが多い。
カリフォルニアのメルロー:柔らかく、親しみやすく、甘美、ハーブ、黒い果実、ベーキングスパイスのノート
ジンファンデル(Zinfandel)
【主な産地】クロアチアが原産でイタリア南部ではプリミティーヴォとして知られているが、栽培のほとんどはアメリカでその大半がカリフォルニアとなっている。温暖な地域が適しておりカリフォルニアでも内陸部のロディでの栽培が多い。高級なものはソノマやナパ、パソロブレスなどでも栽培。
【特徴】ブドウの粒は中程度で果皮は薄いが非常に濃い色が特徴。比較的早熟で南イタリアでのプリミティーヴォ(イタリア語で最初という意味)の名前の由来となっている。味わいは気候によって変化するがナパ、ソノマなどの冷涼な地域では赤いベリー系、と程よい酸味、温暖な地域ではブラックベリーやプラム、クミンや黒胡椒のようなスパイスのニュアンス。
カリフォルニアのジンファンデル:ブラックベリー、ラズベリー、ボイセンベリー、チェリー、黒胡椒、クローブ、アニス、ハーブ
シラー(Syrah)
【主な産地】フランスのローヌ地方が原産。フランス以外では、オーストラリアが最も有名でフランスのエレガントでスパイシーなスタイルと比較して、果実味が高くパワフル。シラーズと呼ばれる。チリ、アルゼンチン、南アフリカ、ニュージーランドなどのニューワールドで多く栽培されている。アメリカではカリフォルニア州ではセントラルコーストのサンルイスオビスポやサンタバーバラなどの地域にカルトワイン含めた高品質な産地が、ワシントン州のコロンビアバレー一帯でも人気の高い品種。
【特徴】ブドウの粒は小さく果皮も厚く濃い色合いが特徴。果実味と酸味が強く、程よいタンニンを持つジューシーでスパイシーな味わい。ブラックベリー、黒胡椒、などインパクトのあるアロマも特徴。ローヌ地方では他のローヌ品種である、グルナッシュやムールヴェドル、カリニャンなどとブレンドされるいわゆるローヌブレンドというスタイルが多く、ニューワールドでも同様のブレンドがおこなわれることが多い。
カリフォルニアのシラー:ブラックベリー、カシス、黒胡椒、ベーコン、スモーク、などダークでフルボディなワイン。
まとめ
アメリカで栽培面積が上位のブドウ品種。代表的な生産地、おおよその価格帯や特徴。
| フランスと世界の代表産地 | アメリカの代表産地 | アメリカ産の特徴 | |
| シャルドネ | ブルゴーニュ、オーストラリア、イタリア他 | ソノマ、サンタバーバラ、モントレー | 最も人気の高い品種でリッチなものが多いが近年はエレガントなものも増えている。$20前後のリーズナブルなものから数百ドルのカルトワインまで幅広い。 |
| ピノグリ | アルザス、イタリア、ドイツ、他 | カリフォルニア州全域、オレゴン州 | 飲みやすいデイリーワインとして人気があり$15以下が主流。 |
| ソーヴィニオンブラン | ボルドー、ニュージーランド他 | ナパ、ソノマ、ワシントン州 | さわやかな味わいでニュージーランド産とともに近年人気が高まっている。$20前後でも高品質なものが多い。 |
| カベルネ・ソーヴィニョン | ボルドー、チリ、オーストラリア、等ニューワールド全般 | ナパ、ソノマ、パソロブレス、ワシントン州 | ナパはボルドーと並ぶ世界的な産地。ナパのものは$50以上でないとなかなか高品質なものを探すのは難しいが、他の地域であれば$20前後でも。カルトワインやRP100ポイントなどのワインは数百ドルすることも。 |
| ピノノワール | ブルゴーニュ、ドイツ、ニューワールドの冷涼な地域 | ソノマ、サンタバーバラ、モントレー、オレゴン州 | ソノマはニューワールドを代表する産地で近年ではオレゴン産のものが国内でも人気が高まっている。単一畑は$50以上のものが多い。AVA単位であれば$30前後、より広域では$20前後でも高品質のものがみつかる。 |
| メルロー | ボルドー、イタリア、スペイン、等 | カリフォルニア、ワシントン州 | カベルネ・ソーヴィニョンとのブレンドが多いが単一のものもでも高品質なものも。 |
| ジンファンデル | イタリア(プリミティーヴォと呼ばれる) | ロディ、ソノマ、ナパ、パソロブレス | アメリカ独自の品種で豊潤でスパイシーな味わいはバーベキューなどアメリカ料理との相性も良く人気が高い。$20前後でも高いレベルのものが多い。 |
| シラー | ローヌ、オーストラリア他 | サンルイスオビスポ、サンタバーバラ、ワシントン州 | 近年急拡大する人気の品種、単一品やローヌブレンドが人気。セントラルコーストやワシントン州などの有名なカルトワインなども人気。 |




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