ピノノワールは気候や土壌によって味わいが変わりやすいといわれているブドウ品種。
世界的にはフランスのブルゴーニュが有名ですが、アメリカも生産量でフランスに次ぐ第二位の生産量を誇ります。
その中でもカリフォルニアは恵まれた気候もあり圧倒的な生産量と数多くの銘柄があります。
カリフォルニアのピノノワールといえばその濃厚でフルーティなものを想像されることが多いかもしれませんが、近年では高い技術力やテロワールを活かすことにによって高品質でエレガントなものも多くなっています。
そのカリフォルニアのピノノワールの特徴と代表的な産地について解説していきますので、カリフォルニアのピノノワールを選ぶ際の参考にしてみてください。
先にカリフォルニアのおすすめのピノノワールが知りたいという方は以下の記事をご参照ください。
ソノマカウンティを中心にしたノースコースト、サンタバーバラを中心としたセントラルコーストからそれぞれ代表的な10銘柄を紹介しています。
カリフォルニアピノノワールの特徴
カリフォルニアにおけるピノノワールの歴史
「神がカベルネソーヴィニヨンを作り、悪魔がピノノワールを作った」と言われるほど栽培が難しいピノノワール。カリフォルニアでも19世紀から栽培が始まったもののはあまり普及しませんでした。
長い黎明期を経て1970年から80年代にかけて出現したブティック・ワイナリーは醸造技術の試行錯誤により高品質なピノノワールを生み出しカルトワインのブームのきっかけを作りました。
その後、2004年に上映されたヒット映画「サイドウェイズ」などの影響もあってピノノワールの人気に拍車をかけ、いまでは250トン以上の生産高を誇り、カベルネソーヴィニヨンやシャルドネの600トン程度に次ぐ生産量にまで伸びています。
味わいの特徴/他の地域との違い
カリフォルニアの豊かな太陽は果実味や熟成をもたらしやすくリッチな味わいは長寿で芳香なブルゴーニュと比較して若い段階でも十分に楽しむことができます。
高い醸造技術やその普及により平均的に高品質のピノノワールを生み出しハズレが少ないのも魅力。
同じアメリカで最近人気の高まっているオレゴン産のピノノワールと比較すると、果実味やしなやかさがカリフォルニアの特徴として表現されることが多いようです。
ただ近年のカリフォルニアのピノノワールはその恵まれた気候の特徴を残しつつより純粋で低アルコール、エレガントで繊細なものも増えています。
より涼しい土地と時間をかけて成熟するクローンの採用、土地固有の風土を活かしたなど他の地域の良い部分も取り入れながら年々成長している、伝統を大切にしながら革新的な部分を取り入れる素晴らしいワインを生み出し続けています。
カリフォルニアは非常に広い地域、その広い地域の南北に続く沿岸部で栽培されており、地域ごとに土壌、気候、が異なり、様々な特徴を持ったピノノワールが楽しめます。
カリフォルニアのピノノワールの特徴のまとめ
- 赤ワインの中ではカベルネ・ソーヴィニョンに次ぐ生産量で近年人気が高まっている
- フルーティで濃厚なもの一辺倒ではなくエレガントなスタイルも増えている
- カルフォルニア内でも産地によって異なった特徴のピノノワールがある
カリフォルニアのピノノワールの代表的な産地
南北に長いカリフォルニアのワイン生産地の中でも、冷涼な地域で多く栽培されているのがピノノワール。海流の影響で緯度が低くても冷涼な地域も多いため、海岸沿いの多くの地域で高品質なピノノワールが栽培されている。
作付け面積をカウンティ単位でみるとソノマ、モントレー、サンタバーバラの順。
より細かいAVA(American Vitricultural Areas=アメリカぶどう栽培地域、いわゆるアペラシオン)では北から、メドシーノ内のアンダーソンバレー、ソノマカウンティ内ではロシアンリバーとソノマコースト、ソノマとナパのの両カウンティにまたがるロスカーネロス、シリコンバレー近くのサンタクルズマウンテン、モントレー内のサンタルチア、サンタバーバラ内のサンタマリアとサンタリタ、などが代表的な産地となっている。
「ピノノワールはワインメーカのものではなく生産者のブドウである」と言われるように各アペラシオン、ブドウ畑がそれぞれの独自の特徴を持っている。
以下にAVAごとの代表的なワイナリーをあげるが、彼らもその地域のものだけを醸造しているわけではなく、他のAVAの畑から採れたブドウからも高品質なワインを同時につくっているケースが大半です。
アンダーソンバレー「ノースコースト最北端メンドシーノにあるピノノワールの名産地」
ノースコーストでも最も北に位置するメンドシーノカウンティ内にあるAVA。ピノノワールの他にシャルドネやリースリングなどのアルザス品種を栽培している地域。レッドウッドの古樹に覆われた海からの風や霧の影響を受けた冷涼な地域で厳しい環境で育ったタンニンと酸を多く含み熟成に向いたワインはコレクターからも人気。
リトライ(Littorai)、リス(Lhys)、ウイリアムズ・セリエム(Williams Selyem)、ケークブレッド(Cakebread)などはこちらのブドウを使っている有名なワイナリー。その他にも多くのワイナリーがある。公式サイトはこちら。
ソノマコースト「最高級ピノノワールの産地」
ソノマカウンティの最も有名なピノノワールとシャルドネが栽培されているAVAですが、実際の醸造はAVA外で行われることが多い地域。その名の通り太平洋に面した南北に長く、寒流や霧の影響で冷涼な気候。
長い間ブドウの栽培には適さないとされていたが、近年では霧の影響を受けない高度に畑をつくるなどで高品質でエレガントなピノノワールやシャルドネの代表的な生産地となっている。
リトライ(Littorai)、ジョセフ・フェルプス(Joseph Phelps)、フラワーズ(Flowers)、ハートフォード(Hartford)など多数のワイナリーが同AVAのワインを醸造。
ロシアンリバー「カリフォルニア、ニューワールドのピノノワールの中心地」
ソノマカウンティの中心部にあるシャルドネでも有名なAVA。砂質の土壌、冷涼な空気や霧、それに反して豊富な日光によってビロードのような質感と明るい色が特徴。
高い酸味は豊かな果実味と良いバランスとなる。フレンチオークの使用や、醸造技術の向上もあり、より複雑な味わいになっている。
ロシアンリバーは広いAVAのためその中でもさらに6つの小さい地域に細分化されそれぞれが微妙にことなった特徴を持っている。
カリフォニアのピノノワールで一番有名なのがロシアンリバー、私も最初に覚えた産地
ウィリアムズ・セリエム(Williams Selyem)、コスタ・ブラウン(Kosta Browne)、デュモル(DuMOL)、ダットン・ゴールドフィールド(Dutton Goldfield)、ハートフォード(Hartford)など多数。
ロスカーネロス「ナパとソノマの交差点から生まれるコスパの良いピノノワールの産地」
ナパとソノマの境界にあるAVA。他の産地と比較すると太平洋から離れるがサンパブロ湾から2近いことから冷涼さを保っている。スパークリングワインで有名な地域でもありシャルドネとピノノワールが主な品種となっている。粘土質の土壌はタンニンと程よい酸味で長期熟成に向いたピノノワールを生み出す。
ロシアンリバーやソノマコーストと比較すると比較的リーズナブルな価格帯のワインが多い。ラクレマ(La Crema)、エチュード(Etude)、セインツベリー(Saintsbury)などは比較的リーズナブル。高級なものだとHdVが有名(神の雫にも登場)。
サンタクルズマウンテン「カリフォルニアで最も見過ごされたテロワール」
サンフランシスコから南に1時間程度、シリコンバレーと太平洋の間にあるAVA。600メートルと高い標高の森の中に小規模な畑が点在。栽培面積は小さいがと沿岸の涼しい気候と岩の多い土壌から複雑でタンニンやミネラルを備えたピノノワールを生み出す。
こちらは地元ということもあって大好きなピノノワールの産地
代表的なワイナリーは、マウント・エデン(Mount Eden)、リス(Rhys)、ミンディゴリッジ(Mindego Ridge)、トーマス・フォガティ(Thomas Fogarty)
サンタクルズマウンテンの詳細はこちらの記事もご参考。
サンタルチアハイランド「カリフォルニアで最も重要なピノノワールの生産地」
モントレーのサリナスバレーの西側の細長いAVA。風が強く標高も高い。砂質で水はけのよい土壌。涼しい気候と夜間と朝の霧の冷却効果と豊富な日光というユニークな組み合わせのあるAVA。
リリース時にもおいしく、長寿にも向く。酸味、熟した果実味や複雑なフレーバー、バラの香りとミネラル。
本拠を別に置く有名な醸造メーカーへの供給者としての側面の方が大きい。代表的なワイナリーはピソニ(Pisoni)、ポール・ラト(Paul Lato)、パライソ(Paraiso)など。
サンタマリア/サンタリタ「ピノノワールブームの発信地、サンタバーバラのAVA」
サンタバーバラカウンティは2000年代以降のピノノワールの人気に火をつけた映画「サイドウェイズ」の舞台となった地域。その中でもサンタマリア、サンタリタのAVAがピノノワールでは特に注目。
サンタマリアはサンタバーバラカウンティの最北端にあり、1981年にカリフォルニアで2番目にAVA認定された歴史あるアペレシオン。冷涼な気候と降水量が少ないのこの土地の特徴でブドウの生育期間が長い。
サンタリタも同カウンティ内にあるAVA。なだらかな丘に囲まれ太平洋の風が程よく吹く。岩の多い土壌はエレガントで濃縮された果実味と程よい酸味と強めのミネラル感を引き出す。
こちらもサンタバーバラの観光と一緒にテイスティングによく行く地域。ナパと比較すると牧歌的な雰囲気でリーズナブルにテイスティングできるところが多いですね
代表的なワインメーカーは、代表的なワインメーカーは日本でも人気のオーボンクリマ(Au Bon Climat)、フォクセン(Foxen)、シースモーク(Sea Smoke)、メルヴィル(Melville)、サンフォード(Sanford)、ビエンナシド(Bien Nacido)など。
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