【解説】ワインと土壌~味わいの特徴や品種との関係~

ワイン解説記事

ブドウの栽培に大きな影響を与える土壌。ワインの香りや味わいにも大きく影響すると言われています。土壌といってもかなりの種類がありますが、ワインにおいて良く取り上げられるものについて、その特徴、地域、栽培されている品種についてまとめてみました。

ワインの味わいはもちろん土壌だけで決まるものではないですし、特に気候との組み合わせが重要になってくると思いますが、土壌の大まかな特徴を知っているだけでより楽しくワインを飲むことができるのではないでしょうか。

また、ワインテイスティングに行ったときなんかにも土壌の説明をしてくれることが多いので、少し知っているだけで会話がはずむこともあると思います。

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土壌の分類

土壌のもととなる地殻を構成する岩石のつくられた過程によって火成岩、堆積岩、変成岩にわかれる。小中学校の理科で習ったはなし。

Rock cycle transformation and stone formation process labeled outline diagram. Geological scheme with heat, pressure, weathering and lithification force vector vector illustration
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火成岩(Igneous):マグマが地上に上昇する間に冷却されて固まったもの。

火成岩のなかには冷却された期間が長い深成岩と短い火山岩がある。その中でワインの土壌としてよく登場するのは、それぞれの中の花崗岩(かこうがん/Granite)と玄武岩(げんぶがん/Basalt)。あるいは、玄武岩を含む火山岩あるいは、火山性土壌として表現されることも多い。

堆積岩(Sedimentary):既存の岩石が風化、浸食されてて運ばれ、堆積したものが固まったもの。

もっとも一般的な堆積岩で砂がかたまった砂岩(Sandstone)、泥が堆積した頁岩(けつがん/Shale)、生物由来の堆積物であるチャートの一種である火打石(Silex/Flint)などがあるが、ワインの土壌としてもっとも有名なのは石灰岩(Limestone)。

変成岩(Metamorphic):火成岩と堆積岩が変性作用をうけ組織(内部構造)が変化してできたもの。

片岩(へんがん/Schist)、粘板岩(ねんばんがん/Slate)、片麻岩(へんまがん/Gneiss)などがある。

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これらの岩石の種類で構成されるテクスチャ(Soil Textures)はその粒度によって、粗い順から砂利・礫(Gravel)、砂(Sand)、シルト(Silt)、粘土(Clay)などに分けられる。

代表的な土壌

土壌は元となる岩石の種類やテクスチャによって無限の組み合わせが存在するが、ワインの栽培土壌として代表的な土壌とその特徴について説明します。

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花崗岩(かこうがん/Granite)

マグマがゆっくりと冷却されてできた岩石で石英と長石が主成分。酸性度が高い。世界中に分布している。露出部より堆積岩の下の基盤岩地下深くに多く分布。根深いブドウの木をつくるのに十分な多孔性をもった岩で、何年にもわたって発達することで層状のアロマを生む。

花崗岩の土壌のワインの特徴として良くあげられる表現は、「華やかなアロマ(香り)」、「フローラル」、「なめらかな酸味」、「さわやか」、「ミネラル感」、「しっかりとしたストラクチャー」、など。

世界の産地:フランス/ローヌ北部、フランス/ロワール地方ミュスカデ、フランス/ボジョレー地方、スペイン/リアスヴァイシャス地方

アメリカの産地:カリフォルニア/パソロブレスに一部含まれる

品種:シラー、ガメイ、ミュスカデ、アルバーニョ

火山性土壌(Volcanic)

玄武岩、安山岩、流紋岩などマグマが急激に冷却されてできたもので、玄武岩は地球表面でもっとも一般的にみられる岩石。土壌は複雑で、きめ細かく、水はけもよく、熱を保持・反射する傾向にある。土壌に鉄分を多く含むため、ミネラルと灰っぽいさびたようなフレーバーをもたらすことも。ワインの特徴としてあげられる表現は、「いきいきとした複雑なアロマ(香り)」、「豊潤な果実味」、「ミネラル感」、「高い酸味」、「土、香ばしさ」、など。

世界の産地:イタリア/メウントエトナ、イタリア/シチリア島、スペイン/カナリア諸島

アメリカの産地:オレゴン/ウィラメットバレー、ワシントン/ワラワラバレー、ナパバレーの一部

品種:シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニョン、ネレッロ・マスカレーゼ、アシルティコ、ピノノワール

石灰岩(Limestone)

炭酸カルシウムを50%以上含、古代の海底やサンゴ礁に生息していた生物の殻などが堆積してできた堆積岩。世界でももっとも優れたワインの土壌として評価されている。水はけが良一方で高い水分保持ル力。炭酸カルシウムはミネラルを吸収する。ミネラルと高い酸をもった長寿なワインが特徴。「さわやかな酸味」、「エレガント」、「しなやか」、「繊細」、などの表現が良く使われる。

世界の産地:フランス/ブルゴーニュ、フランス/シャンパーニュ、イタリア/ビエモンテ、等多数

アメリカの産地:カリフォルニア/パソロブレス、サンタクルズ、マウント・ハーラン

品種:シャルドネ、ピノノワール、ソーヴィニョン・ブラン、シュナン・ブラン

粘板岩(Slate)/片岩(Schist)/片麻岩(Gneiss)

泥岩や頁岩(けつがん)が変形してできたのが粘板岩(スレートとも呼ぶ)。よりも密度が高く酸性度も高い結晶質の岩石が片岩(シストとも呼ぶ)。はがれやすい鉱物の層ででいきている。片岩からさらに変形が進んだものが片麻岩。保温性に優れており、ミネラル感の大きい力強いワインとなる。変成岩全般で豊ではっきりとした風味、「ミネラル」、「酸味」、「スモーキー」、などと表現されることが多い。

世界の産地(変成岩全般):ドイツ/モーゼル、フランス/ロワール地方、スペイン/ガリシア

品種:リースリング、シラー、ミュスカデ

粘土(Clay)

粒形による土壌の分類のなかで最も細かいものが粘土。表土は膨張、収縮するが、下層土は水分とミネラルを保ち、乾燥からブドウをまもる。粘土自体の質感に似た、厚く、丸いプロファイルをもったワインとなる傾向にある。「果実味」、「密度の高い質感」、「厚み」、「ボディ感」、「豊富なタンニン」などと表現されることが多い。粘土ベースの土壌の組み合わせはほぼ無限にあり、代表的なものは石灰質粘土(比率の違いにより泥灰岩、粘土質石灰岩ともよばれる)や、シルト、砂などとの組み合わせのローム、沖積土など。

世界の産地:スペイン/リオハ、フランス/ボルドーのポメロール、オーストラリア/バロッサバレー

アメリカの産地:ナパバレー、ソノマカウンティ

品種:カベルネ・ソーヴィニョン、シラー、テンプラニーリョ、メルロー、カベルネ・フラン

砂/砂利(Sand/Gravel)

粘土、シルトより粒度が大きい粉砕された岩が砂、砂利。水はけが非常に良く雨の多い気候でもうまく機能する土壌。温暖な気候ではワインを柔らかくし、色が薄く、酸味もタンニンも少ない。涼しい気候では熱を良く保持することで芳香性の高いワインに。害虫に対する抵抗力が強い土壌。「淡い色」、「凝縮性」、「エレガント」、「繊細」、などがワインの特徴

世界の産地:イタリア/バローロ、南アフリカ/スワートランド、フランス/ボルドーのメドック、等

アメリカの産地:カリフォルニアの一部

品種:カベルネ・ソーヴィニョン、ネッビオーロ、シラー、ジンファンデル

まとめ

ワイン栽培で良く使われている土壌と、そのワインの特徴、代表品種についてます。気候やその他の条件との組み合わせでその特徴は変わってくるとは思いますが、ワイン選びの際の参考になればと思います。

特徴代表品種
花崗岩フローラル、ミネラル、なめらかな酸味、さわやかガメイ、ミュスカデ、シラー
火山性土壌豊かな果実味、ミネラル、高い酸味、土っぽさネレッロ・マスカレーゼ、カベルネ・ソーヴィニョン、ピノノワール
石灰岩さわやかな酸味、エレガント、しなやか、繊細ピノノワール、シャルドネ、ソーヴィニョン・ブラン
粘板岩/片岩/片麻岩ミネラル、スモーキーリースリング、ミュスカデ、シラー
粘土豊かな果実味、密度の高い質感、厚み、豊富なタンニンカベルネ・ソーヴィニョン、テンプラニーリョ、シラー
砂/砂利淡い色、凝縮性、エレガント、繊細ネッビオーロ、カベルネ・ソーヴィニョン、ジンファンデル、シラー
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