ナパバレーと並んでカリフォルニアを代表するワインの銘醸地であるソノマカウンティ。
ソノマカウンティのワインについてその歴史、特徴、ワインの品種や代表的な産地について解説します。
ソノマカウンティのおすすめワインについては以下の記事をご参照ください。
ソノマカウンティの歴史
1821年にロシアからの入植者がソノマカウンティ内のフォートロス(ソノマコーストの一部)ブドウの樹を植えて栽培したのが歴史の始まり。
その後、他のカルフォルニアの地域と同じようにスペインのカトリック教会によりミッションが設立され、数千本のブドウの樹が植えられた。
その後、ワイン栽培が一般にも広がり、1840年代後半からのゴールドラッシュや鉄道網の拡大などもあってワイン産業が形作られる。
この頃、ハンガリー人の起業家アゴストン・ハラジーが1955年に畑を購入、1857年にカリフォルニアで最初のプレミアムワイナリーであるブエナ・ヴィスタを開いたとされている。
その後、禁酒法(1920-33年)まではソノマカウンティはカリフォルニアでも最も大きなワイン生産地となっていた。22,000エーカー(90平方キロ)、256のワイナリーがあった。
禁酒法後にはソノマカウンティのワイナリーは50未満まで減少。その後長い低迷期を迎えるが、1976年のパリスの審判ややカルトワインブーム、栽培、醸造技術の向上などもあり少しずつ復活。
現在では、63,000エーカー(255平方キロ)でナパバレーの1.4倍程度の土地に425を超えるワイナリーを有する世界的にも有名なワイン生産地となっている。
ソノマカウンティの特徴
地理
サンフランシスコから北へ約50キロ、東のマヤカマス山脈を挟んでナパバレーと隣接する大西洋側の一帯がソノマカウンティ。
南北に80キロと広大な土地を持つがワインの栽培面積はその6%にあたる63,000エーカー(255平方キロ)でナパバレーの1.4倍程度となっている。
域内には18のAVA(アメリカブドウ栽培地域=周囲の地域と区別するため、ブドウの栽培に影響を与える特定の地理的、気候的特徴を備えた区切り)があり、それぞれに特徴のあるブドウ、ワイン造りが行われている。
気候・土壌
ソノマカウンティがワイン銘醸地となる大きな2つの要因は気候と土壌。
谷、平野、山、森林、川、海岸、と多様な地形は驚異的な数の微気候をもたらすが、全般的には、長く乾燥した暖かく日差しの強い日中と海からの風や霧による涼しい夜という恵まれた気候。
また、土壌についてもローム質の土壌から火山性や岩の多い土壌まで非常に多様でソノマカウンティだけでフランス全土より多くの土壌タイプがあると言われている。
【ソノマカウンティの特徴(まとめ)】
・ナパバレーに隣接、山脈を挟んで大西洋側に位置する。
・域内には18のAVAがありそれぞれ特徴のあるブドウ、ワインを製造。
・ブドウ栽培に最適な気候でかつ域内に多様な微気候がある。
・土壌の非常に多様でフランス前途より多様な土壌タイプがある。
ソノマカウンティのブドウ品種
栽培されるブドウ品種は50種類以上、カーネロスとロシアンリバー、ソノマコーストなどの涼しい地域ではシャルドネやピノノワール、暖かいドライクリークやロックパイルなどはジンファンデル、アレクサンダーバレーではカベルネ・ソーヴィニョン、が代表的な品種となっている。
シャルドネは最も多く栽培されておりなんと全体の32%、続いてカベルネ・ソーヴィニョン、とピノノワールが21%という順になっている。
ピノノワール
カリフォルニアの中でもピノノワールの産地として最も有名なのがソノマカウンティ。18のAVAのうち特にピノノワールで知られているのは、ロシアンリバー、ソノマコースト、カーネロスの3つ。
いずれも大西洋からの影響を受けて冷涼な気候がエレガントなピノノワールを生み出す。
シャルドネ
シャルドネはソノマカウンティで最も多く栽培されているブドウ品種。栽培地域はピノノワールと同様に冷涼な気候のロシアンリバー、ソノマコースト、カーネロス。
カリフォルニアのシャルドネはリッチでバターっぽく甘いという印象かもしれないが、近年ではエレガントえミネラル感や酸味のある素朴なものも多い。
カベルネ・ソーヴィニョン
ソノマカウンティの中では比較的温暖な地域で栽培されている。知名度では劣るがナパバレーと並んで高品質なカベルネ・ソーヴィニョンの産地。知名度が劣る分比較的リーズナブルなワインを見つけることもできる。
18のAVAのうちカベルネ・ソーヴィニョンで有名なのは、アレクサンダーバレー、ナイツバレー、ソノママウンテン、ソノマバレー、ムーンマウンテン。
ジンファンデル
アメリカ独自の品種であるジンファンデル、ソノマカウンティの中でも比較的温暖な地域、ドライクリーク、アレクサンダーバレー、ロックパイルなどで栽培されている。
カリフォルニア全土のジンファンデルの生産地域と比較するとそれでも冷涼な気候。他の地域のような豊潤でスパイシーでパンチのあるものより少しエレガントなスタイルのジンファンデル。
ソノマカウンティの代表的な産地
19あるAVAのなかから特に有名な6つのAVAを紹介します。
ソノマコースト
ソノマカウンティの最も有名なピノノワールとシャルドネが栽培されているAVAですが、実際の醸造はAVA外で行われることが多い地域。その名の通り太平洋に面した南北に長く、寒流や霧の影響で冷涼な気候。
長い間ブドウの栽培には適さないとされていたが、近年では霧の影響を受けない高度に畑をつくるなどで高品質でエレガントなピノノワールやシャルドネの代表的な生産地となっている。
【代表的なワイナリー】
リトライ(Littorai)、ジョセフ・フェルプス(Joseph Phelps)、フラワーズ(Flowers)、ハートフォード(Hartford)など多数のワイナリーが同AVAのワインを醸造。
ロシアンリバー
ソノマカウンティの中心部にあるピノノワールとシャルドネで世界的にも有名なAVA。砂質の土壌、冷涼な空気や霧、それに反して豊富な日光によってビロードのような質感と明るい色が特徴。
高い酸味は豊かな果実味と良いバランスとなる。フレンチオークの使用や、醸造技術の向上もあり、より複雑な味わいになっている。
ロシアンリバーは広いAVAのためその中でもさらに6つの小さい地域に細分化されそれぞれが微妙にことなった特徴を持っている。
【代表的なワイナリー】
ウィリアムズ・セリエム(Williams Selyem)、コスタ・ブラウン(Kosta Browne)、デュモル(DuMOL)、ダットン・ゴールドフィールド(Dutton Goldfield)、ハートフォード(Hartford)など多数。
アレクサンダーバレー
ソノマカウンティの北東部に位置するマヤカマス山脈を挟んでナパバレーと隣接する地域。ブドウの栽培面積は14,500エーカー(60平方キロ)、標高は40~800メートル。31のワイナリーがあり主な品種はカベルネ・ソーヴィニョン、シャルドネ、ジンファンデル、メルロー。
カベルネ・ソーヴィニョンはマヤカマス山脈の西側の丘陵地帯、斜面、山で栽培されている。砂利の土壌は水はけがよく、ソノマの中でも暖かい気候はこの品種に適している。
カベルネ・ソーヴィニョンは深みがあり、色が濃く、タンニン、酸のストラクチャーが強く、黒い果実、乾燥タバコ、ハーブ、ほこりっぽさなどが特徴。
【代表的なワイナリー】
シルバーオーク(Silver Oak)、ジョーダン(Jordan)、ストーンストリート(Stone Street)、フランシスフォードコッポラ(Francis Ford Coppola)などが有名なワイナリー。
ナイツバレー
アレキサンダーバレーの南東に位置する地域でソノマの中心から最も離れた険しい山、尾は、牧草地と豊富な野生生物の手つかずの地域。
ソノマカウンティの他の地域より温暖だが、西からは常に涼しいそよ風が吹く地域。ブドウの栽培面積は2,500(10平方キロ)、ブドウ畑は30程度がるがワイナリー自体は少ない。
カベルネ・ソーヴィニョンはリッチでコクがあり、ブラックフルーツ、スグリ、甘草、チョコレート、カシス、土のフレーバーが特徴。
【代表的なワイナリー】
ピータマイケル(Peter Michael)、アナコタ(Anakota)の他、アローウッド(Arrow Wood)、ベリンジャー(Beringer)のブドウ畑などがナイツバレーにある。
ムーンマウンテン
ソノマバレーAVAの中に含まれるブドウ栽培面積は1,500(6平方キロ)と小さいが高地のワインを区別するためにラベルに記載することを望むワイナリーが多く2013年にAVA認定された。
同じくソノマバレー内のソノママウンテンAVAとは対照的に、ブドウ畑は南西に面しており、午後の太陽だけでなくサンパブロ湾からの風の影響も受ける。土壌は火山性。
カベルネ・ソーヴィニョンは風味豊かなノート、ブラックオリーブ、ラベンダー、ブラックベリー、コーヒーなどのフレーバーが特徴。
【代表的なワイナリー】
ハンゼル(Hanzell)、ハンナ(Hanna)、他、ターリー(Turley)、ベッドロック(Bedrock)、ルイ・マティーニ(Louis M. Martini)が使用するブドウ畑がある。
ドライクリーク
長さが約25キロ、幅が約3キロと細長い土地に9,300エーカー(38平方キロ)のブドウ畑があり58のワイナリーがブドウを栽培する地域。
ジンファンデルが特に有名でその他にもカベルネ・ソーヴィニョンを中心とするボルドー品種が栽培されている。
【代表的なワイナリー】
ドライクリーク(Dry Creek)、セゲシオ(Seghesio)、リッジ(Ridge Lytton Springs)などいずれもジンファンデルで有名なワイナリー。
まとめ
ソノマカウンティはナパバレーと並んでカリフォルニアを代表するワインの産地。ナパバレーほどの派手さはないが、恵まれた気候、多様な土壌もあり実力派のワイナリーが多い。
品種も多様でいずれもレベルは高いが、特に冷涼な気候で栽培され、一流のワインメーカーによって醸造されるシャルドネやピノノワールは特に世界的にも評価が高い。
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